クリスマス前の夜勤

クリスマス前だというのに、この上なく忙しい病棟。病院全体が満室御礼状態なので、内科の患者は症状が何であれ空室がある科に送られてきます。結果、コロナ・インフル・ノにロ罹患した高齢者、癌患者さん、アル中さんと看護が大変な人ばかり。日勤では座る時間もないし、病棟は色んな物が置きっぱなし、やりっぱなしとイライラが募るばかり。そんな時、同僚の一人がクリスマス前に夜勤3連チャンだとぼやいていたのを耳にしました。

【夜勤が嫌とな?】平日の夜勤(21時半から7時15分まで)は看護師3人。患者さんがちゃんと寝てくれれば、薬の投与にトイレのお手伝いのみ。病棟が散らかってても、夜勤なら目をつぶれる。ゆっくり編み物が出来きる上に夜勤手当ても貰える♪♪私の日勤と交代しない?とその同僚に聞くと快く承諾。編み物グッズを持って夜勤3連チャンを楽しみにしていました。

しかーし、この夜勤3連チャン、それこそ座る時間もないくらい忙しかったのです(号泣)初日は寝たきりの高齢者や癌患者さんのお世話と輸血で忙しく、2日目はアル中さんの禁断症状と敗血症らしき症状が凄まじく看護師2人がほぼ付きっきりで、後の1人が他のナースコールに応える状態。その後、アル中さんはコロナに罹患していることが判明。私達3人全員、濃厚接触者という...アル中さんに加え、140キロを超える巨体の患者さんとやはり肥満の患者さんの体位交換&おむつ交換もあり、足も腰もバキバキです。3日目は上司に訴えたおかげで准看が追加され4人になりました。3日目の夜勤前半はアル中さんこそまだ手がかかるものの、前日ほどではなく。おお!今日こそ念願の編み物夜勤になるか??と期待。でもここはまず普段出来ない病棟の諸々の補充と片づけをしなければ!!手持ち無沙汰の准看さんに手伝ってもらって整理整頓が完了☆よし、これからゆっくり朝まで編み物を...

夜勤専門の同僚2人がグループリーダーなので、私の仕事は2人のヘルパー。編み物をしながらナースコールを取り、定期的に寝たきり患者さんの部屋を覗きに行きます。4時を回り、夜勤も後3時間!ふとドアの開いている寝たきりの男性患者さんRを確認しに行きました。Rはまだ50代前半。自宅で倒れているのをを幼馴染みに発見されました。1人暮らしで身内はおらず、訪問看護も付いていませんでした。喉頭癌を患っている上、食事もままならなかったのか体はがりがり。終末期であるのは明らかですが、病棟医は抗生物質、抹消静脈栄養、酸素吸入、モルヒネ持続皮下点滴を処方し、回復する望みに賭けていました。それでも、蘇生処置は不可(心肺蘇生はしない)。

夜勤初日も2日目も夜中は起きており、もごもご何かを訴える感じだったけれど、最終日はシフト開始の時からウトウト状態。申し送りでは日中調子が良かったと言うので、私も同僚も疲れてぐっすり寝てくれると思っていました。Rがベッドでごそごそ動いているのを同僚が確認したのが3時半。私が編み物を止めて、ふとRの部屋に行ったのが4時15分。あら、酸素吸入の鼻チューブが外れてるじゃん!!んんん?なんか頭が不自然な感じで寝にくそう...とRに触ると冷たい...えぇっ!??と胸に手を当てるも息をしてない...あぁ、静かに息を引き取ったんだ...蘇生処置はしないことになっているので、ひとまずすべての機器を停止して薬品室にいる同僚の元へ。

【ねぇ...Rが息してないんだけど...】と言うと、【うそっ???30分前くらいに手を頭の方に動かしてたんだよ!】とかなりショックなよう。【だってさっきまで酸素吸入のチューブを取ろうとしたりしてたんだよ!本当、30分前に確認したんだから!】【さっきまで】生きていた人が亡くなる不思議。回復の見込みは薄いとは思ってはいたけれど、日中調子が良かったと言うし、誰も今日亡くなってしまうとは思わなかったので驚きを隠せません。

私にとっては、病院勤務4年半で初めて担当患者さんを自分のシフト中に亡くしたことになります。毎回【今日が山かな】と言われるたびに【看取りの手引き】を印刷して準備していたのに、Rの死は不意打ちでした。管だらけだったRを解放してあげ、連絡する家族もいないのでケア後はすぐ病院の安置所へ。早番でやって来た同僚達もRの死には驚いていました。

クリスマスも病棟で過ごすはずだったRが亡くなり、140キロの患者さんも1か月の入院を経てやっと老人ホームへ。私は希望通り年末年始はみっちり働くことになっているので、新たに入院してくる患者さんにびくついております。今日の時点で【家での生活が困難】と入院してきた高齢者が病棟に3人...ゴミ屋敷、転倒、栄養不足の方々で、病院での治療は特にないのです。ノルウェーは訪問看護を活用して、高齢者がなるべく自宅で生活できるようサポートしていますが、元気な人の一人暮らしと健康に問題のある人の一人暮らしは違います。不安と孤独は1日数回の訪問ではどうにもならず。どこまで高齢者の自立を促進して、どこまで介入すべきなのか、難しいところです。

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